twnovelまとめ
2009/10/19 09:20
041 「橋の上の妖怪少女」
橋の上には妖怪少女がいる。別段出会うのに特別な条件が要るでもなく、ただ橋の端から端までを所在無くうろうろしている。馬車が通ると道をあけるし、荷台に林檎があればものほしそうな顔もする。橋の上からどこかに行かない以外は取り立てて書くべきこともない妖怪である。
10/20 01:14
042「便利ーのお願い」
シルク往ったらユザワヤ往け。ユザワヤ往ったらセカイド往け。世界堂往ったら「わぁ、売り切れだぁ」。ナニソレ! バールとネギの扱いも出来ないくせにっ! ねぇー。ぉ買い得してくださいよぉー。SALE見せてくださいよぉー。
043「ジョイス風珈琲唱歌」
音頭とーる奴らも吸ターバッコするやつらもあくせくシオール貨幣足りーず舌(べろ)ォチェッて瑠のある上島、こう引かん。コメダらけのワシゃノアール。
044「おおおかさんもわからない」
ピーマンを半分に切つて種を取り、右にぢいさん、左にばあさんを詰めて「どちらが美味いか」と問ふたところ流石の大岡忠相も答えることができなかった。なお、肉は焼くと縮むので、ピーマンに詰めるときには思ったより多めに詰めるのがポイントです。
045「曾祖父母」
考えてみれば曾祖父母というのは8人居る。やや感動した私は老人ホームに出かけたり墓を掘ったりして、とうとう全員を並べることができた。9人でやるものといったら野球しかない。夕間暮れの秋風が吹く中ピッチャーの私が投じた第一球は、誰も拾わずどこまでもただ転がっていった。
046「擦る」
版画の授業が終わるとばれんというのは使い道がないもので、一部の小学生は刷り込まれたかのように色々なものを擦り始めた。芳吉は思いついて、居間で昼寝をしているじいさんの禿頭をおもむろに擦り始めた。「徳川埋蔵金」という文字が黒々と浮かび上がった。しかし文字だけである。
047「福引き」
町内会の福引きでは、三等は福引き券20枚、二等は福引き券500枚、一等ではなんと福引き券3000枚が当たる。ボカデニさんは福引き券を資財にして、ベルリン駅前に家一軒建てた。
048「つぶつぶ」
缶入りの粒ブドウジュースを飲んだら、粒がつぶつぶつぶつぶと喉に勝手に流れ込んできた。あんまりにも美味しかったので息も切らず飲み干したつもりでいたが、翌朝全身が筋肉痛で動けない。両手は泥で汚れている。
049「野球拳」
野球拳の相手はセミの終齢幼虫であった。開演前にようやく地上に出てきたのだという。それにしてもよくみると、セミの幼虫というのは明るい色をしている。これから大空に羽ばたこうという命の明るさだろう。しかしながら私はじゃんけんが弱いので、結局まだセミは脱皮できていない。
050「KOBUTORI」
なんだかんだで付いた瘤も30を超えるとなんとなく理屈がわかってくるもので、おじいさんは鬼の様子から瘤の取り外し方をこっそり覚えました。荷物をまとめたおじいさんは夜逃げ同然にハリウッドに渡り、特殊メイクのプロフェッショナルとして名を馳せるのですがそれはまた別の話。