twnovelまとめ


2009/12/23

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#twnovel 若気のいたりとはいうが、18の時にメイドさんを雇ってからもう70年になろうとしている。宅配便が来ても「今日は血の巡りが悪くて」と云ってテレビの前から動こうとしない。思い切って暇を出そうとしても「またまたご冗談を」と微笑むか、聞こえないふりをして虚空を睨んでいる。
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#twnovel 寂しい一本道を歩いていると、向こうから自転車に乗った警察官が二人連れでやってきた。「あのおすみません、吉祥寺の駅はどっちでしょうか」教えられるままに側溝に飛び込むと「まさか本当にやるとは」と声がする。濡れた服の代わりに制服を貸してもらうと、三人して見回りに出た。
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#twnovel NHKの内紛により組織はNHK(根津ホルマリン愛好会)とNHK(根津ホンマモン同好会)に分裂した。前者は市場中の生鮮食品をみんなホルマリンで保存しようという一派で後者はホンマモンの食材を求める一派である。もともとはNHK(根津販売機構)であり下町の胃袋の担い手。
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#twnovel 金鯱は常に相方と見つめ合っているのが嫌になっていた。お互い空気のような存在、というにはずっと視線を交わしていることが辛かった。といって、ここで自分が手を抜くと名古屋城が割れて赤味噌が溢れ出す。名古屋市役所に濁流のように流れゆく赤味噌を想うと、ここは我慢であった。
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#twnovel 吾輩は天才であつたので既に殻中の時から己の意識があつた。天分と云ふのは恐ろしいもので硬い殻の中で自分が出来上がるのを刻一刻と眺めていたのである。だが然し、不意に天地が真逆に成つたかと思ふと急に硬いところにぶつつけられてお畢いである。「厭だア。半分雛になつてるワ」
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#twnovel ケドレ星人からお歳暮が来た。東急デパートの包み紙だったのでおそらく本人が申し込みに行ったに違いないが、あれだけ常に体中から笑い鱗粉を撒き散らすやつが、どんな工夫をして品物を物色していたかに興味が沸いた。中身は酒のつまみの瓶詰セットだったので、甥を呼んで遣った。
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#twnovel 久々に曲を書こうと思うがTバック中学生くらいしか思い浮かばない。「Tバック(Am)中学生は(Em)気前(Dm)がいいんだよ(Am)」と弾いてみて悪くない気がして、そのままTバック中学生がハンバーガーセットをおごって呉れる旨の曲を一気に書き上げたがやや泣けてきた。
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#twnovel 薔薇より赤い心臓、と浮かんだ歌詞をメモしてみたものの今ひとつで、しかたなく焼き鳥屋への通勤を開始する。皮、軟骨、皮、軟骨、といつものメニューで焼酎を飲んでいると大いなる事実にぶちあたった。ハツお呉れ、と頼んでみると白かった。薔薇より白いハツは、ワインの白が合う。
2009/12/24

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#twnovel 昔々、年の暮れになると子供におもちゃを配って歩く三太おんじがおったげな。子どもが好きなおんじのことじゃ、おもちゃを配る範囲は村から町、町から都へと広がってってな、終いにはおんじを手伝う者が出てきた。大店が宣伝目的でスポンサーになった。と考えると比較的無理が無い。
2009/12/30

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#twnovel さんたさんは歳末の繁華街に現れる妖怪だ。酸多産の名前のとおり、口から強酸性の吐瀉物を撒き散らしつつアメ横辺りを闊歩する。その実は年に一度、会社の忘年会でだけ酒を飲む黒須三太さん(59)。毎年恒例の大惨事も定年であと二年限り。歳末の人気者にも不況の風は吹きつける。






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