twnovelまとめ


2009/10/08 23:55

001「箱」
 箱を売る男がいた。大小さまざまな箱をリアカーに載せて細い道を練り歩くので、通り抜けの出来ない長屋では不便したことも数多くあるだろう。箱の中には何も入っていない。人によってはナイフでばらして煮付けにしたり、0点のテストの束をしまっておいたり、授乳したりするらしい。

002「骨より硬い」
 骨より硬い。毎回そんなことを思いながらぼくはナイフを握って振り下ろす。骨のあげる音で自分が今刺しているのが誰だか思い出すようになった。おばあさん、おねえさん、おじょうさん、おばあさん、おじいさん、でぶ、でぶ、でぶ。とおもったら革のソファーだった。やれやれだ。
003「犬男」
 犬男が昼寝から醒めると明方か夕方か見分けのつかぬ風と空。こうして縁側に転がっているのも寒くなってきた。居間の電気も点けぬまま、ばあちゃんは何処へ往ったやら。ぼんやりとしていると勝手口から手押し車の音だ。「あらあんた犬ちゃんパンツくらい履きなさいよ」ばあちゃんだ。
004「ハイク(裏山だけに)」
 俳人、ヌラホ松林の朝は早い。金星がのぼるころには裏山に登ってまづは朝の一句だ。今日は神有り、季語は着ぐるみ。さっそくニューロンを摺ると御自慢の神経繊維集合体を震わせて一句詠んだ。「着ぐるみのケメメズンドがたゆたひてえけめえけめともぢずりの鳴く」先生それ短歌です。
10/09 00:02

005 「主審」
 四球目はスローカーブでストライク、見逃し三振バッターアウト。おい冗談じゃねえやな、いまのしょんべんボールなんぞ膝下だったろうが、と、云んでみたとて埒明かず、主審の面ァ伊藤四郎によく似てる。思わず「ニン」と嘯くと云われ慣れているのか、あっという間に「退場」の声。
006 「聞き違い」
「いつでも何度でも」を「いつでも納戸でも」と聞き違えたキチ●イのヨシボウは今日も納戸で腰を振る。「うわあたまらねえ炊き立ての飯みたいだ」などと道満晴明の漫画のようなことを云いながら烏カァで夜が明けて、見にいってみるとまだやってる。こうなると機動隊でも多分無理。
007 「ポクポク」
 弟の娘が木魚を気に入った様子。景気よくポクポク叩いているうちにノってきたらしく、奇声をあげながら乱れうち、「何のために生まれてなにをして生きるのか」とアンパンマンマーチを絶叫しだした途端に仏壇の障子がピシャリと閉じられた。ほら爺ちゃん怒っちゃった。ブツダン変わらぬ光景である。
008「ソラマメ」
 グリーンピースの船に負けず劣らず大暴れの環境改善団体ソラマメーズ。なんでも海水を二千年かけて真水にしちゃおうということでがんばってェる。「ソラマメーズだけに腎臓に優しいんですね」の応援メッセージにかんかんがくがくの末内部分裂、一家離散の憂き目にあった同団体代表曰わく「俺ぁ泳げないんだ」。
009「海鮮丼」
 海鮮丼を食べようとすると蚊がやってきて「これは何でげすか」と聞くので「これはお前の想像もつかないであろう遠くから運ばれてきた生き物をバラバラにした食べ物だ」と答えると周りをグルグルと廻り始めた。羽音がしなくなったと思ったら耳たぶを刺されていた。まるく腫れている。
010「象カレー」
 車庫に象が隠れていたのでとりあえず匿うことにした。おそらくニュースにあった「出稼ぎ」であろう。「たいして食べさせないくせに働かせるのは人一倍で」そうでしょうそうでしょう。駅前の牛丼屋に「急募:象(カレー要員)」の張紙がしてあったはづだ。カレーは鼻から出る。





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