まずは今回のブート盤の謳い文句から。
「クルセイダーズの1974年、名盤「 SOUTHERN CONFORT 」リリースに伴うツアーから7月4日、ニューヨークの
エイヴリー・ フィッシャー・ホールでのライブを極上のステレオ・サウンドボードにより収録。問答無用の
ラリー・カールトン在籍時のクルセイダーズの怒涛のライブを、超高音質で楽しめる、大推薦盤の登場です!」
この宣伝文句だけで快哉を叫びます。「クルセイダーズの1974年」、そう、クルセイダーズが最もクルセイダーズらしかった頃の
ライブの「超高音質」の音源とくれば、クルセイダーズファンならすぐにも食指が動くはず。定価は三千円。正規の新譜盤よりも
高い印象、ですが即買わざるを得ません。何より聞きたい衝動が強い、それにブート盤のこと、今後手に入らなくなるかも知れませんからネ。
「ザ・クルセイダーズ!レディースアンドジェントルマン」と、司会者の声高らかな紹介、
そしてホラ聞こえてきます、Stix Hooperの腰の入った餅つきドラムと掛声、Wayne Hendersonの気合の言った合いの手「オーヤー、カモン」。
「Stomp And Buck Dance」「Night Theme」での
Wayne Henderson怒涛のラッシュ。ボクサーの躍動感。聞いている当方の筋肉に確実に伝道するファンクの波動。Joe Sample、Larry Carltonのソロも熱が入る。
円やかさのかけらもない荒削りのファイト。切り裂くようなパンチ。駆け引きなど微塵もない丸裸のソウル。
Larry Carltonのギターソロを聞きながら
髣髴と浮かんだのは「鉄砲玉」。抗争の矢面に一人玉砕する若きチンピラの犬死。走る一本気。当たって砕け散る純情。
奇しくもちょうどこの時、日影丈吉氏未読のボクシング小説「十まで数えろ」を読んでる最中。絶好のタイミングでした。
往年の日活映画の雰囲気を彷彿させるこの小説、「モーニングを着たやくざ」とか「拳闘ゴロ」とかが跳梁跋扈し、それと並行して青年ボクサーのタイトルマッチや
過去の毒殺事件が進行する。そこに
流れるソウル。これが一本気で熱い。八百長試合を強要されながらも屈せず堂々とタイトルマッチに挑む青年ボクサー。ここで
「Put It Where You Want It」がカウンター気味に入り、追い討ちをかけるように「Hard Times」のWilton FelderのSoulfulなソロのワンツー・ストレート。
これは効く。沁みる。「ラッシュ、ラッシュ。正の確実なパンチが、ふらつく斤道をロープに追い詰めていく。湧きに湧く喚声。
ゆだるような興奮にむせた照明の中で」瞬間テキサスの風が吹きます。
そしてラストナンバー「So Far Away」のお馴染みデスマッチロングトーンの長いこと長いこと。それだけに感激も一入。
いやぁ日影さんのボクシング小説とクルセイダーズ傑作ブートの不思議で幸せなめぐり合わせ、
久々にクルセイダーズのファンキー魂を満喫しましたヨ。
このブート盤、宣伝文句に偽りなし、文字どおりの傑作です。
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