「Street Life」を映画「SHARKY'S MACHINE」の冒頭の朝焼けでオレンジ色に染まった摩天楼のシーンで使った
製作者兼主人公役のバートレイノルズは、クルセイダーズファンであるとともに、クルセイダーズの音楽が
アクション映画やハードボイルド映画にはもってこいのサウンドであることを知悉していた人であるに違いありません。
何を隠そうアルバム「UNSUNG HEROES」の一発でクルセイダーズの虜になってからというもの、何故アクション
映画の監督は、もっともっとクルセイダーズのファンキーサウンドを映画で活かそうとしないのだろうと今だに
切歯扼腕の思いでいます。
今回のアルバムを曲順を追って聴いていますと、まず冒頭に「Street Life」を持ってきて、
次に「Marcella's Dream」を選曲するところに、この編者の御仁もまた、
無類のアクション映画好きではないかと窺わせます。
「一曲入魂」に書きましたが、「Marcella's Dream」を聴いて『直ちに浮かぶのは、
早朝のひんやりとしたアスファルトジャングルのたたずまい。
それをモノの感触に譬えるならさしずめ銃器の肌触りとでも言いましょうか。手にすれば、ズシリと重たく、
冷たい肌の感触。内に破壊の能力を秘めたクールな面貌。』そう、このアルバムから匂ってくるのは、
まぎれもなく硝煙の匂いなのです。
5曲目の「Soul Shadows」を山頂に、このアルバムの選曲は対を成しているかに思えます。御覧下さい、
幕開けと終幕に「動」の曲を置き、2曲目と8曲目に「静」の曲を配置し、3曲と4曲の流れと6曲と7曲の流れ
が登山と下山のようにシンメトリックです。4曲と6曲は明らかにアクション・シーン。山場に「Soul Shadows」
を配置したところに、映画「レオン」の趣向が漂います。
宣伝文句に「グルーヴという言葉の意味がわからない人はこのアルバムを聴いてみては」とありましたが、ハードボイルドの触感
がグルーブと分かちがたく結びついているのも事実でしょう。解説で小川隆夫氏が記されているように
「こういう演奏をさせたらクルセイダーズの右に出るものはいなかった」のです。
実は恥ずかしながら、長いこと「プライスレス」を「廉価盤」と勘違いしてこのアルバムには食指が動かなかったのですが、今回
遅まきながら、その意味が「お金に換えがたい、かけがえのない」ということを知って慌ててこのアルバムを購入、
あらためてクルセイダーズが「かけがえのない」存在であることを実感したのでした。
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