この人に白衣を着せたら、科学者に見紛うばかり。まことに神経が細やかそう。鍵盤から流れ出す音色はまさにクリスタル。でも見かけとは裏腹に、核にマグマのように煮えたぎるファンキー魂が存在するのも、また確か。「SOUL SHADOWS」がポンと生み出されたのは、その何よりもの証しでしょう。

GEMM.COMから送ってきたばかりの「Ashes To Ashes」を聴きながら、ごく自然に本棚から一冊の画集を取り出してしまいました。
金子国義『アリスの画廊』。金子さんはジェームズ・ブラウンの大ファンだそうで、なるほどその絵からは、ジェームズ・ブラウンばりのパッショネートな熱さが伝わってくるのも事実です。
画集のページをめくっていて、ちょうどアルバム２曲目にさしかかった時、一枚の写真がひらひらと手元からすべり落ちました。拾って見ると、それは１０年以上も前、阿蘇山で開催されたイベントに僕らのバンドが出演した際の写真。体育館で総勢19名居並んで写ったその写真を手にJOE SAMPLEのリリカルな調べの誘いで、ついつい当時の、喜びも悲しみも風のように通り過ぎていったバンド活動に思いを馳せてしまいました。
JOE SAMPLEの奏でる音色には確かに思い出の扉をこじ開ける魔法の引力があります。この「The Road Les Traveled」にもその魔法作用が強烈に感じられます。
そして時に思い出は明日の活力の呼び水になることがあるものです。
その他アクションファンク「Strike Two」、ラブリーな「I'LL Love You」と、今回もJOE SAMPLEは変幻自在の至芸を見せてくれました。