この人に白衣を着せたら、科学者に見紛うばかり。まことに神経が細やかそう。鍵盤から流れ出す音色はまさにクリスタル。でも見かけとは裏腹に、核にマグマのように煮えたぎるファンキー魂が存在するのも、また確か。「SOUL SHADOWS」がポンと生み出されたのは、その何よりもの証しでしょう。

算盤玉石っていうのをご存知でしょうか。
算盤玉の形をしたグレイの鉱石で、硬い石の一角を崩すと、中から方解石やら水晶やらがぎっしりと光輝きながら露出します。少年時代にこの算盤玉石にいたく魅せられた記憶があります。
この算盤玉石さながらに、硬い甲殻に包まれた宝石のような幼年時代の輝かしき楽しかった思い出を 人はそれぞれ心の中に秘めているに違いありません。何にも束縛されることのなっかた、大自然と一体になって遊び戯れていたあの人生の黄金時代。
今回の「All God's Chidren」を聴きながら人は必ずやそんな心の算盤玉石を見出すに違いありません。
JOE SAMPLEの奏でるエレピの一音一音に珠玉の輝きがあります。そのサウンドの手招きとともに心の山道に甲虫やてんとう虫やアゲハ蝶など様々な昆虫が飛び交い、やがて算盤玉石の一角が崩れ少年時代の記憶の宝玉が見えてくるのです。JOE SAMPLEの職人芸とも言える見事なサウンド・マジック。
「Bones Jive」は武闘派の趣で、アレッこの曲調、クルセイダーズの「MODERN WORLD」収録の「ALTERNATING CURRENTS」にそっくりだナって思い製作年度を見ましたら、まさに1989年と「MODEN WORLD」一年後の製作ではありました。「Senen Years Of Good Luck」もハートにヒットする重いフックですヨ。
とにかく今回は、JOE SAMPLE珠玉の名曲「All God's Children」の名人芸に触れるだけで十分でありましょう。