1996 Warner Bros. Records |
ダルマさんダルマさんにらめっこしましょ、アップップ、とでも思わず発してしまうようなCDの円盤にデザインされたjpe sampleの強面の表情。
右眼の箇所にCDの中心の穴があり、それがさながら右眼にまだ黒目を塗られていない達磨を彷彿とさせます。転んではまた起き上がる七転び八起きで常に鎮座まします達磨さん。joe sampleの口髭もまさに達磨さんの風貌。CDが回転すると始まる高速度の七転び八起き。
「clifton's gold」、「tones for ben」、「firot love」。このcharles lioydの奏でるめっぽう官能的なサックスの音色の3曲が、まるでこのアルバムを横切る梅雨前線のように粘っこい湿気をもたらし、全篇にアンニュイ感たゆたう雰囲気を醸し出しています。そうして、時折梅雨の合間をぬって「old places old faces」、「hippies on a corner」が清々しくあるいは雄々しく奏でられたりもします。
たまさか見やったアルバム解説に掲載されたセピアカラーの写真、目を閉じ祈るようにうつむくjoe sampleの姿に何かを決断しようとする真摯な男の気配を感じるのは僕だけでしょうか。
ほどなくこの心の梅雨前線は消失し、梅雨明け後の青空のように晴朗で清涼感溢れる「sample this」、「the songs lives on」、「the pecan tree」がたてつづけに生まれることになります。確かに、あの生死を彷徨う危険な病態から幸いにも帰還したjoe sampleは何かを吹っ切ったに違いありません。
達磨は必ず起き上がります。
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