極端な言い方に聞こえるかも知れませんが、このアルバム「ROLES」は、「WOMAN YOU'RE DRIVIN' ME MAD」の1曲だけでもう充分、後は余分とさえ思えました。
こういう言い方は、あくまでも「WOMAN YOU DRIVIN' ME MAD」を称える最大級の賛辞と思ってください。
激情に満ち満ちたこの1曲を聴いてすぐにも思い浮かんだのが、あのルノー・ベルレーのデビュー作となったフランス映画「個人教授」。もう30年以上も前に公開された映画のこととて、おそらくは記憶に留めておられる御仁もさぞかし少ないでしょう。ルノー・ベルレーのその後も杳として知れません。
なんとも色っぽい年上の女性ナタリー・ドロンに恋する18歳の青年のこの物語は、当時大ヒット、フランシス・レイの奏でる映画音楽もヒットしたものですが、まさに今回の「WOMAN YOU'RE DRIVIN' ME MAD」はjoe sample 版「個人教授」。
たかまる青年の激情を思わせるようなエドワード・ソニー・エモリーのドラムは、オートバイのエンジン音と化し、恋人然と後部シートに年上のナタリー・ドロンを乗せた若いルノー・ベルレー運転するバイクがパリの街並みを走り抜けていくのを目の当たりにするよう。joe sample の思い入れたっぷりに奏でられるピアノも、そしてドラムもパーカッションもこの危険な二人の愛の心拍数を否が応にも高めていきます。
聴くほどに胸締めつけられるほどの恋情がこみ上げてくるこの佳曲には、忘れかけていた「激情」を思い出させてくれる強さがあります。
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