この人に白衣を着せたら、科学者に見紛うばかり。まことに神経が細やかそう。鍵盤から流れ出す音色はまさにクリスタル。でも見かけとは裏腹に、核にマグマのように煮えたぎるファンキー魂が存在するのも、また確か。「SOUL SHADOWS」がポンと生み出されたのは、その何よりもの証しでしょう。

今回のアルバムを一言で表現するなら、ズバリ「リラックス」でしょう。
JOE SAMPLEとDAVID T.WALKERが実にゆったりとした気持ちでプレイに興じているのがひしひしと感じ取れます。気心の知れた旧知の仲間の所以でしょう。解説書に掲載されたお二人の談笑光景、いつも飄々とした演奏スタイルのDAVID T.WALKERそのままの和やかな印象。
今回のJOE SAMPLE、いつものリリカルな色調、武闘派の面影とはまったく趣の変わった、野太いブルースタッチで心地よい整体術を施してくれますヨ。
確かにブルースと言えば紫煙と人いきれに咽ぶ「ストリート・カフェ」での演奏光景を思い浮かべもするでしょうが、秋晴れの片田舎、彼方に黄葉の山々を眺め、縁側で日向ぼっこをしながら聴くのも一興です。それも和菓子を摘まみ緑茶を啜りながら。JOE SAMPLEのブルースタッチとホンワカ飄々然としたDAVID T.WALKERの奏でるギターの調べが殊のほか緑茶に合うのに新鮮な驚きを覚えるはず。
「C.Cライダー」や「HONKY TONK」の流れる田園風景、畜産農家の肥やしの臭気漂う何とも素朴な視聴覚環境。心身ともにリラックスし、不思議と身内に力が漲ってきます。