カルナバル
[Carnaval:スペイン語 〜カーニバル、謝肉祭の意〜]
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第8章
ロタの目は、 「体の調子はどうだ」 いきなり声をかけられて、彼女は夢から醒めたように顔を上げてこちらを見た。 「……大丈夫です。もうすっかり。お手間を取らせました」 「おまえには命を救ってもらった借りがある。死なれちゃオレも寝覚めが悪い」 ロタはかすかに微笑んだ。 「トテッポはどうだ」 マシーンの監視装置を見ていたパンブーキンが叫んだ。「すげえ。持ち直してきてやがる。バケモノみてえな生命力だぜ」 セリパが歓声を上げた。 「さすがはトテッポだ」バーダックはロタを振り向き、満足げに笑った。 「よかった。これでわたしも自分の援護が遅かったことを悔やまずにすみます」 ロタは自分に注がれているバーダックの遠慮のない視線に気づいて言った。 「なにか……?」 「前のやつよりそっちの方が似合う」 ロタは新しい黒い戦闘服に身を包んでいた。腕と脚を露出した、セリパと同じタイプの色違いだ。 「古傷はそれでも隠れるし、第一、肌の白さが引き立つ」 「あんたって男は、あんな緊急時でも、ちゃっかり見るものは見てるんだね」 呆れ果てて言うセリパの言葉に、ロタの顔は見る見る真っ赤になった。 「わ、わたしに何をしたのです」 「何をって……救急措置だ。服を脱がしてマシーンに入れた。まあ、役得ってことだな。このくらいのお楽しみがないとリーダーなんてやってられねえ」 「な――」ロタは絶句した。「わ、わたしはあなたに、そのような対象として見られることを好みません!」 すごい勢いでメディカルマシーン室を出て行く彼女を見送りながら、バーダックは笑って言った。 「はっはっは。ムキになってやがる」 「懲りない男だね……」背後でセリパが嘆息した。 バーダックとセリパが見舞うと、独身者用の狭いトーマの部屋は一杯になった。 「パンブーキンのやつは置いてきた。あのデブが入る余地はないからな。よろしく言っといてくれとよ。まあ、もうしばらくの辛抱だ。傷が癒えればおまえたち二人で、も少しマシな部屋に移れる」 バーダックはにやりと笑ってトーマの頬に右手で軽くパンチを当てた。 カップルでひとつの部屋に住むと、独身者よりは広い部屋をあてがわれる。貴重な戦士、戦闘民族の子どもを生み出すつがいに、繁殖に適当な場所を与えてやろうという、フリーザ軍のありがたい配慮だった。 フリーザの命じるままに戦い、死んでゆき、欠員をすぐ補充できるよう、子どもを次々に産む。その生き方はサイヤ人の利益とも合致していた。――少なくとも今のところは。 照れ笑いを収めてトーマが訊いた。 「なかなかの遣い手がオレの代わりに入ったと聞いたが」 「ああ、いい戦士だ。スピード、技、身のこなし、どれも申し分ねえ」 なあ、と同意を求められて、セリパは二人に 「使えないというわけじゃないね。でも、まだ未知数さ。今回のはあまりに相手が情けなさすぎた」 「厳しいな」 「あたしは事実を言ってるまでさ。あんたは女に甘すぎるよ、バーダック」 「違いねえ」トーマは笑い、その拍子に手からカップが滑り落ちて床で砕け散った。 「まだ麻痺が残ってるようだな」 帰り道でバーダックはセリパと肩を並べて廊下を歩きながら言った。セリパは無言のままだ。 逞しい腕がうなだれた背中に回され、大きな手が力強く肩に置かれた。 「大丈夫、やつのことだ。すぐによくなる」 「…………」 「おまえがしおらしい顔をしてると押し倒したくなるからやめてくれ」 セリパはバーダックの腕を逆手に取って |