Huanying xinshang Ding Fengzhang de zhuye




 
 
              
       辭世

                       近藤勇
孤軍援絶作囚俘,
顧念君恩涙更流。
一片丹衷能殉節,
睢陽千古是吾儔。


靡他今日復何言,
取義捨生吾所尊。
快受電光三尺劍,
只將一死報君恩。

******
辭世 

孤軍 援け絶えて  俘囚(ふしう)と作(な)り,
君恩を 顧念して  涙 更に 流る。
一片の丹衷  能
(よ)く節に殉(じゅん)じ,
睢陽
(すゐやう)は千古  是(こ)れ吾(わ)が儔(ともがら)


他に靡
(なび)きて 今日  復(ま)た何をか言はん。
義を取り 生を捨つるは  わが尊ぶ所,
快く 受く 電光  三尺の劍,
(た)だ 一死を將(も)って  君恩に報いん。

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◎ 私感註釈

※近藤勇:幕末の武人。新選組局長。名は昌宜。幕臣時、大久保大和。武蔵の人。天保五年(1834年)〜慶応四年(1868年)。新選組局長として尊王攘夷派の志士の取締りにあたった。戊辰戦争では、甲陽鎮撫隊を組織して政府軍と戦ったが、流山で捕えられ、処刑された。これはその最期の詩。

※辞世:この世を去る際に詠み遺す詩歌。この詩について伊勢丘人先生より、次のような助言を頂きましたので、ご紹介いたします。わたし自身も、伊勢丘人先生の見方が正しいと思います。
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  この近藤勇の詩について。彼は辞世の詩として、七言絶句を二首作っていたのではないかと思われることです。
  先ず、押韻形式が律詩のものではないということ、表現形式が律詩ではなく、古詩に多い形式でもないということ、更に、「君恩」という単語が前半と後半の二カ所に見られること、また、前半、後半の四行それぞれが、韻も平仄も絶句形式になっていることが挙げられます。
  近藤の後世の世話をした人たちは、詩文には関心がなく、あまり深く考えず、辞世の七言絶句二首を一詩としてしまったということはないでしょうか。
                                伊勢丘人(07.4.3)
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※孤軍援絶作囚俘:孤立した軍隊となって援軍が絶えて、囚われの身となった。 ・孤軍:孤立した軍隊。幕府軍が瓦解状態となって、甲陽鎮撫隊を率いて甲州や流山を転戦したことを指す。 ・援絶:援軍が絶えて無くなるの意。単語としてはない。 ・作:(…と)なる。(…と)なす。 ・囚俘:俘囚。囚われの身。

※顧念君恩涙更流:君主の気にかけてくださったことを思い起こせば、涙が一層流れる。 ・顧念:気にかける。いつくしみ思う。 ・君恩:君主の恩徳。君主の恩寵。 ・更:一層。さらに。

※一片丹衷能殉節:満身の忠誠心は、節義のために命を捨てることができる。 ・一片:心・誠意・熱心など。一面の。全面的な。陸游が『金錯刀行』「黄金錯刀白玉裝,夜穿窗扉出光芒。丈夫五十功未立,提刀獨立顧八荒。京華結交盡奇士,意氣相期共生死。千年史冊恥無名,一片丹心報天子。爾來從軍天漢濱,南山曉雪玉。嗚呼,楚雖三戸能亡秦,豈有堂堂中國空無人。」を作っている。我が国では、藤田東湖の『詠古雜詩』「我慕楠夫子,雄略古今無。誓建回天業,感激忘其躯。廟堂遂無算,乾坤忠義孤。空留
一片氣,凛凛不可誣」がある。唐・王昌齡には『芙蓉樓送辛漸』「寒雨連江夜入呉,平明送客楚山孤。洛陽親友如相問,一片冰心在玉壺。」 がある。その外にも李白の『哭晁卿衡』「日本晁卿辭帝都,征帆一片遶蓬壺。明月不歸沈碧海,白雲愁色滿蒼梧。」や、王之煥の「黄河遠上白雲間,一片孤城萬仞山。羌笛何須怨楊柳,春風不度玉門關。」がある。 ・丹衷:真心。丹心。赤心。文天祥の『過零丁洋』に「辛苦遭逢起一經,干戈寥落四周星。山河破碎風飄絮,身世浮沈雨打萍。惶恐灘頭説惶恐,零丁洋裏歎零丁。人生自古誰無死,留取丹心照汗。」があり、南宋・文天に『江月』和友驛中言別「乾坤能大,算蛟龍、元不是池中物。風雨牢愁無著處,那更寒蟲四壁。槊題詩,登樓作賦,萬事空中雪。江流如此,方來還有英傑。   堪笑一葉漂零,重來淮水,正涼風新發。鏡裏朱顏都變盡,只有丹心難滅。去去龍沙,江山回首,一綫青如髮。故人應念,杜鵑枝上殘月。」 前出・陸游『金錯刀行』に「一片丹心報天子」がある。 ・能:…ことができる。よく。可能表現。 ・殉節:〔じゅんせつ;xun4jie2●●〕節義をつくすために命をすてる。

※睢陽千古是吾儔:(唐代に)陽(すいよう)で奮戦した張睢陽こと張巡こそが永遠のわたしの同志である。 ・睢陽:〔すゐやう;Sui1yang2○○〕「張睢陽齒」(南宋末・文天祥の『正気歌』「睢陽」) を指し、唐代、睢陽を死守した張巡のことを謂う。張巡は安禄山の乱のとき、雎陽城を護って奮戦して死んだ忠臣。『資治通鑑・唐紀・肅宗文明武徳大聖大宣孝宣皇帝…』に「顏杲卿、袁履謙以守常山死。許遠、
張巡以守睢陽。」とある。南宋末・文天祥の『正気歌』に「天地有正氣,雜然賦流形。下則爲河嶽,上則爲日星。於人曰浩然,沛乎塞蒼冥。皇路當C夷,含和吐明庭。時窮節乃見,一一垂丹。在齊太史簡,在晉董狐筆。在秦張良椎,在漢蘇武節。爲嚴將軍頭,爲侍中血。睢陽,爲顏常山舌。」 にもその奮戦ぶりが伝えられている。『資治通鑑・唐紀・肅宗文明武徳大聖大宣孝宣皇帝…』に「顏杲卿、袁履謙以守常山死。許遠、張巡以守睢陽死。」とある。なお、睢陽:〔すゐやう;Sui1yang2○○〕は地名。河南省商丘県の南流れる川の北岸にある商丘北西100キロメートルのところか。『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)44−45ページ「キ畿道河南道」では見つからない。河南省を流れる水の支流の名。でこの詩に出る睢陽(すゐやう)は睢水〔すゐすゐ〕という川の陽(北岸)にあった城市。蛇足になるが、雎」〔しょ;ju1〕字は別字。睢」〔すゐ;sui1 ・千古:永久。永遠。とこしえ。歴史的に長大な時間。 ・是:…は…である。これ。主語と述語の間にあって述語の前に附き、述語を明示する働きがある。〔A是B:AはBである〕。 ・吾儔:わたしのともがら。わたしのなかま。




※靡他今日復何言:敵方に靡(なび)いて、今更また、何をか言わん。(何も言うことは無い)。 ・靡他:敵に靡(なび)く。敵に阿(おもね)る。 ・今日:今。 ・復:ふたたび。もう一度。また。語調を整える働きをする語でもある。 ・何:何を。何をか。ここでは、反問の意で使われている。 ・言:ことばに出して表明する。言う。

※取義捨生吾所尊:大義の立場に立って、生命を抛(なげう)つことは、わたしの(平生から)尊ぶところである。 ・取義:大義の立場に立つ。大義を取り立てる。 ・捨生:生命を投げ出す。江戸・良寛の『題義士實録末』に「
捨生取義古猶少,況又四十有七人。一片忠心不可轉,令人永思元禄春。」とある。安積東海の『失題』に「捨生取義是男兒,四海紛紛何所期。好向京城埋侠骨,待他天定勝人時。」 にある。前漢・蘇子卿(蘇武)の『詩四首』其三「征夫懷往路,起視夜何其。參辰皆已沒,去去從此辭。行役在戰場,相見未有期。握手一長歎,涙爲生別滋。努力愛春華,莫忘歡樂時。生當復來歸,死當長相思。」 藤田東湖『和文天正氣歌』「天地正大氣,粹然鍾~州。秀爲不二嶽,巍巍聳千秋。注爲大瀛水,洋洋環八洲。發爲萬朶櫻,衆芳難與儔。…嗟予雖萬死,豈忍與汝離。屈伸付天地,生死又何疑。生當雪君冤,復見張四維。死爲忠義鬼,極天護皇基。」 雲井龍雄の『辭世』「死不畏死,不偸生。男兒大節,光與日爭。道之苟直,不憚鼎烹。眇然一身,萬里長城。」 に同じ。同時代に生きた雲井龍雄の『釋大俊發憤時事慨然有濟度之志將歸省其親於尾州賦之以贈焉』に「生當雄圖蓋四海,死當芳聲傳千祀。非有功名遠超群,豈足喚爲眞男子。俊師膽大而氣豪,憤世夙入祇林逃。雖有津梁無處布,難奈天下之滔滔。惜君奇才抑塞不得逞,枉方其袍圓其頂。底事衣鉢僅潔身,不爲鹽梅調大鼎。天下之溺援可收,人生豈無得志秋。或至虎呑狼食王土割裂,八州之草任君馬蹄踐蹂。君今去向東海道,到處山河感多少。古城殘壘趙耶韓,勝敗有跡猶可討。參之水 駿之山,英雄起處地形好。知君至此氣慨然,當悟大丈夫不可空老。」 とある。 ・所−:…するところ。…こと。動詞の前に附き、動詞を名詞化する。

※快受電光三尺剣:(わたしの首を斬る)長剣の閃(ひらめ)きを快(こころよ)く受け容(い)れよう。(従容(しょうよう)として死に就(つ)こう)。 *無學祖元の『示虜』に「乾坤無地卓孤,喜得人空法亦空。珍重大元
三尺劍電光影裡斬春風。」とある。 ・快受:快(こころよ)く受け容れる。 ・電光:いなびかり。刀の刃(やいば)の燦めきを謂う。 ・三尺剣:長剣。

※只将一死報君恩:ただ一身の死をもって、君主の恩寵に返報しよう。 ・只:ただ…だけ。 ・将:…をもって。目的語を前に出す。古語の「以」に似た働きをする。なお、「將」は「まさに…んとす」という将然形を表す場合があるが、語法上どちらになるかは明瞭である。「只将、<一死>報君恩」では。目的語を前に出す「…をもって」と見るのが適切で、「只(た)だ将(まさに)一死をもつて君恩に報いん」は不可。ただし、歴史的に後者が定着しているのならばそれもよいことだろう。日本語としてのリズムもよいし、日本人近藤勇の辞なので、日本での歴史的な訓みでいいのだろう。 ・一死:一身の死。『漢書』司馬遷傳の『報任少卿書』(『報任安書』)「人固有
一死,死有重於太山,或輕於鴻毛,用之所趨異也。」や、「『吾與汝情雖兄弟,義屬君臣。汝安敢恃才蔑禮?昔先君在日,汝常以文章誇示於人,吾深疑汝必用他人代筆。吾今限汝行七歩吟詩一首。若果能,則免一死。若不能,則從重治罪,決不姑恕。』」と使われている。日本では大槻磐溪の『楠公湊川戰死圖』「王事寧將成敗論,唯知順逆是忠臣。斯公一死兒孫在,護得南朝五十春。」がある。 後世、夏目漱石の『無題』「元是太平子, 寧居忘亂離。忽然兵燹起,一死始醫飢。」 がある。 ・報:むくいる。こたえる。かえす。返報をする。おかえしをする。前出・陸游『金錯刀行』に「一片丹心天子とある。





◎ 構成について

換韻。韻式は「AAABBB」。韻脚は「俘流儔 言尊恩」で、平水韻下平十一尤と上平十三元。このような形式(七言四聯詩)では、このような換韻(平声⇒平声)は普通しない。次の平仄はこの作品のもの。

○○○●●○○,(A韻)
●●○○●●○。(A韻)
●●○○○●●,
○○○●●○○。(A韻)

●○○●●○○,(B韻)
●●●○○●○。(B韻)
●●●○○●●,
●○●●●○○。(B韻)
平成19. 3.29
       3.30完
       4.3補伊勢丘人先生
平成30.11. 2
      11. 3
令和元   6.21



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