あの幻のような東京JAZZの一日から早一週間が過ぎました。
東京は有楽町の東京国際フォーラムの大ホールで開催される「東京JAZZ」に、九州の片田舎人吉からおよそ
7時間、車と新幹線を乗り繋いで行くっていうのに、不思議と隣町の夏祭りに行くような気分。
居酒屋クルセイダーズ
で話柄にしたように近所に下駄履きでライブに行くような感覚なのです。こんな気持ちは初めてです。
新幹線で駅弁をパクつきながら「東京JAZZ」に行くっていうのも、なかなか乙なもの。
チェックインした八重洲富士ホテルから東京国際フォーラムまでは目と鼻の先、歩いて5分ていど。開場5時過ぎに到着すると
フロント広場には飲食やみやげ物売り場など様々な屋台が立ち並び、特設ステージからは今しも演奏するミュージシャンのサウンドが
大音響で流れ多くのファンが興じていました。
会場のAホールは5000人収容。音響を調整するPA係の人たちが陣取る中央席から舞台の方へ向かい、
前から8列目の通路側の席が
指定席で、ステージが思ったより間近なのには驚きました。
ステージの後部には鯉や虎を描いた4本の掛け軸が下がり(この掛け軸が演奏者が変わるたび、2本になったり、
4本になったりし、ライトアップされました)いかにも和風の舞台美術。
当日予約した東京JAZZのメニューは「JAZZ STREAM」で、午後6時ハン・ベニングのドラムパフォーマンスに始まり、
6時20分よりジョジュア・レッドマン・トリオの演奏の後、7時30分からはわが人吉の文化ホールでもライブ
したことのある渡辺香津美氏の「TOCHIKA2010」のステージ。
この「KAZUMI WATANABE TOCHIKA2010」のライブがとりわけ素晴らしく、
会場拍手喝采のスタンディングオペレーションとなり、退場の後舞い戻り再演奏があるほどの盛り上が
りを見せたため、トリを務めるわがジャズクルセイダーズまでこの熱が続くだろうかと心配になるほどでした。
(これまでに体験したクルセイダーズライブはブルーノートでのクルセイダーズだけの演奏であり、完全にクルセイダーズ
だけに没頭できたのですが、今回の場合はこの点が明らかに違っていて、しかも登場が最後ということもあり
耽溺度とシンパシーが確かにこれまでの体験とは異質でした。個人的な感想ですが、やっぱりクルセイダーズオンリー
に耽溺したかったというのが本音です。)
さて、その後15分の休憩を挟んで、やっとこさ、わがジャズクルセイダーズの登場と相成りました。
まず眼を見張ったのはWayne Hendersonの装い。銀メタルの縦じまの衣装で、毎度のように、
これも縦じまの帽子をかぶっての登場。ただ
半斤八両さんご報告のように付き添い人がいて、杖をついての登場でイスに座っての演奏です。
他のメンバー4人が黒のTシャツ、ポロシャツ
と黒で統一しているのにWayne Hendersonだけがこの衣装、
しかもライトに照らされるたびにこの銀ピカの縦縞模様がキラキラと反射するから
Wayne Hendersonだけが殊のほか煌びやかで目立つこと目立つこと。
用意された椅子に座るとおもむろにサングラスを掛ける。
![](tokyojazz1.jpg)
そして・・・出た「ハーハー」「オーヤー」アジテートの嬌声。
これが実に声が大きく幾度となく繰り返される、しかも今回は
始めの一曲「On Broadway」が終了したときからそうでしたが、曲の終了ごとに、Wayne Hendersonが
ゆったりした口調で「どうも〜あ〜りがとう〜」あるいは「あがとうございます」
とリフレインされるので、何とも可笑しくなってきます。
こうしたWayne Hendersonのアクションと同調してJoe Sampleが、もっともっとと煽るように手を
回転させ傍目にも演奏を高揚させようとする姿勢が窺えます。
激しく鍵盤を叩き、感情が乗り移ったように音量の大きい激情のサウンドが
ピアノからはじき出されます。ピアノがさながらパンチングマシンに見えたほどで闘魂剥き出しです。
ピアノ演奏の最中にも、ベーシストやドラマーに身振り手振りで、意思を伝達する仕草を繰り返します。
ドラマーの手から三度四度スティックが宙を飛びます。(以前の福岡サンパレスの時のエモリの曲芸師の
ようなスティックさばきとは
明らかに違ってました)ソロが一旦終了したように感じられながらも、アレッと首をかしげた
ほど長々と続行されるドラムソロ。
不遜な表現かもしれませんが、この成り行きが、何やらんあの「チャンバラトリオ」のドタバタ喜劇に見えてきました。
昔の「てなもんや三度笠」や「チャンバラトリオ」が醸しだしていた、あの往年のドタバタ喜劇の「味わい」にも
つながる空気感を当夜のジャズクルセイダーズから彷彿として体感されました。
![](tokyojazz2.jpg)
「ハーハー」「オーイヤー」とWayne Hendersonから
揶揄されそうですが・・・ファンキーってドタバタと訳しても良いような気がしてなりません。
ファンキー、ドタバタ、人生喜劇。
付け加えますが、Wilton Felderの代役という重責を担ってのGerald Abrightは気合満面の態、
まるで力士がシコを踏むかのように片足上げては
踏ん張りながらのテナーサックスの熱演で胸熱くなるほどだったことも報告しておきます。
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