さてさて今回の映源は、2005年スイスで公演されたJoe Sampleトリオの
野外ライブ。
前半5曲がJoe Sampleトリオのセッション、後半7曲はRandy Crawford
が加わっての演奏という構成。
瀟洒な建物が両側に立ち並び、その中央に仮設されたような按配の野外ステージ。舞台は
曲線が目立つ何ともドイツ表現派の絵画を彷彿させるような設計。
午後の曇り空の下での演奏で、徐々に薄暮となり、Randyの歌う頃になるとすっかり夜の帳が下り、
やがて雨も降り出し観客席には色とりどりのパラソルの花が咲き、照明のライトが外気に滲みます。
今やほとんどスキンヘッドで堂々たるボスの風格へと変貌したJay Andersonに、時の経過を否応
なく感じさせられましたが、まさにJoe Sampleの盟友で、
大好きな「x marks The Spot」では阿吽の呼吸のプレイをご披露、Joe Sample独特のダンディズムが
遺憾なく発揮されていました。
半ばから登場したRandy Crawfordには、久々ながら驚嘆しました。このお方もまた、その名声ともども押しも押されもせぬ
ヘビー級へと立派な変貌をば遂げられておりました。
さらに圧倒されたのはボーカルの力。楽器で人生を語るのも素晴らしい表現ですが、Randyの歌声で
あらためて体感させられたのは、あくまでも「肉声」で語ることの迫力で、それは圧巻です。様々な人生経験の堆積がボーカルに
なめし皮のような肌触りの情感をもたらし、Joe Sampleのピアノがこれまた縁としか思えないほど息が合う。艶冶です。見事なまでのRandyの人生劇場。
ほろりとさせられる「ALMAZ」や「Rainy Night In Geogia」の美酒を味わうような素晴らしさは格別。
両手を広げ羽ばたく仕草で歌う「One Day I'll Fly Away」や馴染みの「Street Life」にも久方ぶりに心酔しました。
観ながら、ついつい一人酒でジョーさんありがとうと祝杯を挙げていました。そんなありがたい映源です。
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