Cool Cool Dandy2 〜Summer Night Festival〜
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第11章
「いい男じゃない」 それが外でひとり瞑想するピッコロを見たマリーンの第一声だった。アメリアは「そうでしょ? そうでしょ?」と目を輝かせている。 「はああ!??」 「アホ面して大口開けてるとハエが入るわよ、ヤムチャ」 神殿の客間でお茶を飲みながらマリーンが言った。ヤムチャは慌てて口を閉じ、大げさに肩をすくめてぼやいた。 「アメリアといい、マリーンといい、みんな目がどうかしてるぜ」 「ピッコロ大魔王の生まれ変わりですって? でも、全然雰囲気が違うわね。何て言うのかしら……渋くてダンディだわ」 「へえへえ、そうですかそうですか」 「妬いてるの? ヤムチャ」クスッとマリーンが笑いをもらした。 「誰が妬くかよ。世も末だなあ。こんないい男がここにいるのによぉ」 「でも、好きにならないでね、マリーン」 「そ、それはないと思うわ。安心して」 「当たり前だ。ピッコロが恋のライバルなんて冗談じゃねえぜ」 やがて瞑想を終えたピッコロがデンデとポポを従えて入ってきた。アメリアにマリーンを紹介された彼は、マリーンをチラッと見て、ただうなずいただけだったのだが、それが彼女にとっては「ニヒルでかっこいい!」ということになって、更にヤムチャを腐らせた。 アメリアは夏祭りの話をし、鞄から前売り券を出してテーブルに並べた。 「チケットがやっと刷り上がったの。みなさん、いかがですか?」 「オレは試合があるからなあ」 「面白そうですね。行ってみたいけど……」 デンデがすまなそうに答えた。やっぱり神様としては、立場上そんなところをうろうろするわけにもいかないのだろう。 「ピ、ピッコロさんは?」 緊張を声ににじませてアメリアが訊いた。自分にそんな話題を振られたことに驚きながら、当然のようにピッコロは「オレは行かん」と、答えた。 そうだろうなあ。訊く方が間違ってるよなあ―――ヤムチャは、がっかりして肩を落としているアメリアを気の毒そうに見やった。 「ちょっとくらい顔を出してやれよ、ピッコロ。せっかくアメリアがチケットをくれるって言ってるんだからさ」 「いえ、あげるんじゃありません」 アメリアは顔を上げ、きっぱりと言い切った。 「へ?」 「いちいち人にあげて回ってたら持ち出しになっちゃうわ。来ていただけるなら」グッと身を乗り出す。「買・って・く・だ・さ・い」 「ちゃっかりしてんなあ。神様んとこに夜店のチケット売りつけに来るか? 普通」 「どっちにしろオレは行かん」 「で、でも……とても楽しいのよ。ピッコロさんが来てくれたらすごく嬉しいわ。学校のみんなだけじゃなくて、近所の人もいっぱい集まるし、ブラスバンド部の演奏とか演劇部の発表とか……そ、それに」 アメリアは目を伏せ、「ダンスパーティーも……っ」と口走ると、小さく「キャッ」と叫んで、両手で真っ赤になった顔を覆った。 「ダンス!? そ、それだけは勘弁してくれ」 ピッコロは横目でチロリとヤムチャをにらんで言った。「なぜおまえが言う?」 「え、い、いや……つい……見たくないなーと」 「誰がダンスなどするかっ」 ピッコロは腕組みして宣言した。「とにかくオレは行かんと言ったら行かんのだ」 「アメリアが来てって頼んでるのに。それはないんじゃない」 「そうですよ。せっかく誘ってくれてるのに」 「デンデ、余計なことを言うな」 「ピッコロ、たまには下界でアメリアにつき合ってやるのもいいと思う」 「ポ、ポポ……おまえまで」 「ここまで言われちゃむげに断れないよな、ピッコロ」 「ピッコロさん、お願い」 「…………」 みんなに口々に責め立てられ、追いつめられて、ピッコロはとうとう大きな声で言った。 「わかった。行ってやる。ただし、オレはターバンを取って行く。ピッコロ大魔王の姿でなら行ってやる。そうでなきゃ行かん。それならどうだ!?」 みんな静まり返ってしまった。ピッコロの作戦勝ちだ。彼がピッコロ大魔王の姿で登場したりすれば、夏祭りはとんでもない大騒ぎになってしまう。そんな条件が飲めるわけがない。 ピッコロは勝利を確信してニヤリと笑った。と、その時、アメリアの自信に満ちた声が響いた。 「いいわ」 一瞬ののち、息を呑んでいたみんなが口々に騒いだ。 「バカなこと言うんじゃない。夏祭りがメチャメチャになるぞ」 「そうよ。ヘタすりゃ軍隊が出動するかも知れないわ」 「ボ、ボクもちょっと無謀だと思います」 「騒ぎを起こす、よくない。今回、アメリア、あきらめた方がいい」 アメリアは花のように微笑んだ。 「だって、夏休み最後の夜を大いに楽しみましょうっていうお祭りなのよ。みんなちょっとはハメを外すわ。仮装してくる人もたくさんいるの。だから大丈夫よ」 「つ、つまり、ピッコロがピッコロ大魔王のコスプレをしてる……そういうことにする訳か?」 アメリアはにこにこしてうなずいた。 「おまえの負けだ。ま、気持ちよく行ってやれよ、ピッコロ」 唖然として口を開けたままのピッコロの肩をポンとたたいてヤムチャは言った。 |