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Cool Cool Dandy2  〜Summer Night Festival〜

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第28章

 アメリアはヤムチャをしみじみと見て微笑んだ。
「よかった。とても元気そうね。事件のことを聞いた時は死ぬほどびっくりしたのよ」
「アメリア、きみにも心配かけちまったな。……で、マリーンは? 一緒に来てくれるかと思ってたんだが」
「それがその……」と、アメリアは口ごもった。「し、仕事が忙しくて……来られないの」
 さっと失望の色が浮かんだヤムチャの顔を見て、彼女は急いで言葉を足した。
「でも、手が空けば必ず……必ずすぐに来るから。心配しないで。お大事にって言ってたわ」

 お大事に、か。恋人が死にかけたってのに、おざなりの一言を言付けただけで、きみは来ないのか……。

「マリーンはオレのことを怒ってるんだろうな。アロマのことで。でもマスコミが言ってることは真実じゃないんだ。会って話したい。そう伝えてくれないか」
「わかったわ」

 これから夏祭りの準備の追い込みだというアメリアが、花瓶に持ってきた花を挿して急いで帰ったあと、今度は賑やかにブルマが現れた。
「ハーイ! ヤムチャ。生きてる?」

 ブルマは椅子の上でミニから伸びた形のいい脚を組み替えた。
「三角関係のもつれですって?―――いつかはこんなことになると思ってたのよ。ま、もっともあんたはいっぺんくらい死んだ方が、女にだらしないその性格が直ってよかったかもね」
「そこまで言うか?」
「ここらで観念して結婚しちゃえば?」
「オレの方はいつだってOKなんだけど、結婚の方がオレから逃げて行くんだ」
「でも今度ばかりはあんたも年貢の納め時みたいね。婚約者がいたなんて初耳だわ。水くさいじゃない」
「あー、えーと、実は彼女じゃないんだ。オレが結婚したい相手は他にいるんだよな」

 ブルマは椅子から勢いよく立ち上がり、人差し指をブンブン振りながら詰め寄って来た。
「呆れたわね! まだそんなこと言ってんの。あんたはね、結婚願望があるとか言いながら、結局は独身の気楽さが捨てられないのよ。だからいよいよって時になって二の足を踏むんだわ。あんたなんていっそのことナメック星人にでも生まれてくればよかったのよ。少しはピッコロのストイックさを見習うのね!」
「そう言うけどな、オレとピッコロは同類だぜ」
「どこが!?」
 ヤムチャはもったいつけて言った。「自分を慕ってくる者に対して邪険に出来ない」
「バッカみたい」
「それにオレのこと浮気性浮気性って言うけど、ほとんどおまえの早とちりだったんだぜ」
「嘘ばっかり。見るたびに違う女を連れてたのは誰よ」
「いや、だからそれは……」

 まあいいか……。ヤムチャは心の中で苦笑した。ブルマは信じないかもしれないが、彼が浮気と呼べる浮気をしたことは、正直言ってただの一度もなかった。
 女性恐怖症を克服したあとの彼は、ブルマの言う通り結構もてた。それは必ずしも恋愛の対象としてではなく、気安く話せる男友達としてのほうが多かったが。そのうちの何人かとは恋愛に発展しかけたりもしたけれど、結局彼はブルマを裏切ることはできなかった。

 それに、彼らはしょっちゅう派手な喧嘩を―――そのほとんどはブルマがヤムチャに対して一方的に腹を立てるものだったが―――していたので、短期間ではあるが別れたことも長い付き合いの中で一度や二度ではなかった。その間にヤムチャが別の女性とつき合っていたことはある。それを二股と呼ぶなら、世の男性はすべて浮気性になってしまうだろう。

「まあいいわ。もう済んだことよ。お互い回り道をしたけど、すべての出会いに意味があるんだって、あたし信じてる」
「そうだな。お互い本当の片割れに巡り会えたことだし」
「そう思うなら、今度の相手は逃がすんじゃないのよ!」
 ハッパをかけると、ブルマは軽やかに笑って出て行った。


 もう見舞いは打ち止めかな。そう思って身の回りの品をまとめながら、ヤムチャは着替えがないことに気づいて落胆の声を漏らした。ゆうべの服はもちろん、ナイフの穴が開いて血まみれの上に、手術の際に裂かれてしまっているので使い物にならない。さてどうしたものかと思っていると、ドアが勢いよく開いてプーアルが飛び込んできた。
「ヤムチャさまあ!」
「プーアル!」
「ヤムチャさま、ごめんなさい、ごめんなさい」
「どうしたんだよ。どうしておまえが謝るんだ」

 そのままプーアルはヤムチャの胸に顔を埋めたまま、何を言っても泣きじゃくっている。切れ切れに話した彼の言葉をつなぎ合わせてみると、ゆうべは彼が警備員をしている宝石店に泥棒が入り、大捕物に疲れて家に帰ると昼まで眠ってしまい、起きだしてTVのニュースで知るまでヤムチャの災難に気づかなかった。それが申し訳なくて自分が許せないというのだった。

「バカだなあ。おまえが謝ることなんてないんだ。全てはオレがドジ踏んだせいさ」
「でも……でも……ボク……」
 しゃくりあげるプーアルをなだめていたヤムチャは、彼の持ってきた荷物に目を留めた。案の定、新しい服が入っている。さすがは相棒だ。服を着替え、プーアルを連れてヤムチャは会計へ入院費を払いに行った。

 清算が済むまでの間、何気なくロビーに置いてあるスポーツ紙を手に取った。締切時間には間に合わなかったせいか、どの新聞にもゆうべの事件のことは載っていない。そのうちの西都スポーツ―――マリーンも購読している、西の都で最多販売数を誇るスポーツ紙―――に目を当てたとたん、彼はギョッとなって立ち上がった。

 ゆうべのアロマとのキスシーンがばっちり第一面を飾っている。「ヤムチャ外野手(西都タイタンズ) 美女との密会をスクープ!!」という、センセーショナルな見出しと一緒に。
「プーアル、あとを頼む!」
「ヤムチャさま!?」
 ヤムチャは泡を食って駐車場へ走り出した。ポケットからエアカーのカプセルを出そうと焦っていると、二人の男が近づいてきた。
「失礼。タイタンズのヤムチャ選手ですね。病棟に伺ったら退院されたと聞いたもので」
「悪いけど取材なら後にしてくれ。オレは今急いでるんだ」
 年取った方の男が懐から警察手帳を出した。
「少し事情を伺いたいのですが」


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