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Cool Cool Dandy2  〜Summer Night Festival〜

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第4章

 アメリアとザカーラが退散し、危うく一緒に追い出されそうになるところを、ヤムチャは何とか踏みとどまった。二人きりになった部屋で恋人を見おろして溜息をつく。
「オレに乱闘をけしかけた上に自分まで乱闘するか!? まったくきみって女は……前代未聞だぜ」
「呆れた?」布団をかぶっていたマリーンがそっと目だけ出して小声で訊いた。
「ちょっとな」

 マリーンはまた布団を頭まで引き上げた。ヤムチャは小さく笑うと、布団を引き下ろしてマリーンの頬に両手を添え、右のまぶたにキスした。
「嘘さ」
 それから唇にもキスして言った。「オレの為に怒ってくれたんだろ? 嬉しいよ」
「ひどい顔になっちゃったわ」
「大丈夫、まだ美人だ」

 そう言ってから、まじまじとマリーンの顔を見つめ、不覚にも吹き出してしまった。とたんに顔に飛んできた右の拳を、パシッと左のてのひらで受け止める。
「遠慮しないで。あたしとお揃いにしてあげるから」
 がっちりつかまれた拳をなんとか外そうと力を込めながら、マリーンは悔しそうに言った。
「謹んでご辞退申し上げます」
 おごそかに言ったあと、ヤムチャは彼女の手首をつかみ、
「それよりこっちの方がいい」と、もう一度キスするために恋人を引き寄せた。

 ドアにノックの音がする。
「誰だ。無粋なやつだな」
 開けてみると、すらりとした金髪の女が立っていた。濃いサングラスで顔を隠している。
「ここにいるって聞いたから」
「え?」
 けげんそうなヤムチャに、クスッと喉の奥で笑いをもらして女は言った。
「もう忘れちゃったの?」
 サングラスを取ってあでやかに微笑んだその顔を、ヤムチャは息を呑んで凝視した。押し出すようなつぶやきが洩れる。
「アロマ……」

 アロマ――そうだ。かつての恋人。ブルマと別れた後、セルゲームの頃に付き合っていた女だ。欲しがっていた高価なアクセサリーを、やっとの思いで買ったその日に振られたんだっけ。
 その彼女がなぜ今頃になって―――?

「嬉しい! やっぱり覚えててくれたのね」
 いきなりがばっと抱きつかれてヤムチャは死ぬほどうろたえた。慌ててアロマの体を自分から引きはがすと、ベッドにいる恋人の方を向き、しどろもどろになって説明した。
「マ、マ、マリーン、こ、この人はオレの昔の、し、知り合いで―――」
「あら」
 今気づいたと言わんばかりにアロマはそちらへ目をやり、マリーンがとっさに名誉の負傷を手で覆い隠すより早く、それに気づいて声を出さずに笑った。その中にたっぷりとこめられた毒―――マリーンは隠しかけた右目から敢えて手を離し、挑むようにアロマを見返した。

「ごめんなさい。わたしったら。他に誰もいないと思ったの。びっくりしたでしょ」と、マリーンに優しく微笑み、「姪ごさん?」と、ヤムチャに顔を振り向けた。
「い、いや。彼女は、つまり……オレたちつき合ってるんだ」
「ええっ!?」
 まるでヤムチャが「実はオレ、ロリコンなんだ」と告白したかのような、かすかな軽侮と嫌悪感を含んだ驚き方だった。年齢の離れた二人がつき合うことは、そんなに不自然なことなのだろうか? ヤムチャとマリーンは気まずい思いでお互いの目を見合わせた。

「そう……お似合いだわ」
 アロマはお愛想笑いを浮かべてあっさり言うと、「ヤムチャ、このあと時間取れる? 話したいことが一杯あるの」と、かつての恋人に甘えるような眼差しを向けた。
 マリーンがそこにいることなど、全く意に介していない――――そんな態度だった。
「い、いや、オ、オレ、このあとはまずいよ」

 ヤムチャはますますしどろもどろになっていく。素早くベッドから抜け出ると、マリーンは椅子の上のバッグをひっつかんでドアに向かった。
「お、おい、もっと休んでなくていいのか」
「……………………」
 言いたいことは山ほどあった。いきなり現れたいけ好かない女――――明らかに彼の昔の恋人だろう――――それと優柔不断なヤムチャの態度。爆発寸前の怒りを胸の奥に無理やり押し込めて、マリーンは無言で外に出た。


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