Cool Cool Dandy2 〜Summer Night Festival〜
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第26章
ブラインドの向こうに大きな影が浮かんでいる。やがてそれは窓を開け、ブラインドを押しのけると病室の中へ入って来た。明るい天井灯が緑色の肌を照らし出している。 さまざまな機器に繋がれてベッドに横たわる男を見下ろしながらピッコロは言った。 「バカめ。恋愛ごときのためにくたばりやがって」 ベッドから弱々しい声が応じた。 「殺すな……まだ……死んでないぜ……」 ピッコロはフンと鼻であしらった。「時間の問題だ。その深手ではな。相手がヘナチョコだと思って甘く見るからやられるんだ。きさまの悪い癖だ」 「オレが……死んだら……ドラゴンボールで……」 「ムダだ。きさまは一度生き返っている。それにそんなくだらんことにいちいちドラゴンボールを使ってたまるか」 「は……相変わらず言うことが……キツイぜ」 ピッコロはベッドに近づきながら懐から手を出して言った。「きさまにはこれでも贅沢なくらいだ」 「せ……仙豆か」ヤムチャの息がだんだんと荒くなって行った。「あ……りが……たいけど……もう……ダメ……みたいだ……」 ピッコロは乱暴に人工呼吸器を外した。 「勝手に死ぬな! どこまでも世話の焼ける野郎だ」 力なく 「ダメか……」 ベッドの男はガバッと跳ね起きて叫んだ。 「勝手に殺すなって!」 記者会見の席上。院長が重々しく口を開いた。 「暴漢に刺され出血多量で意識不明の重体に陥ったヤムチャ選手の容態ですが、依然として予断を許さない状態が続いており―――え? あ、ちょっと――ちょっとお待ち下さい」 走り寄って来た医師に耳打ちされた院長は、キツネにつままれたような顔で言った。 「今入った連絡によりますと、ヤムチャ選手は―――その――意識を取り戻しました。そればかりか縫合した傷もふさがってベッドから降りて歩き回っているという話で―――」院長は部下に向かって怒鳴った。「そんなバカな話があるか!!」 マスコミに突っ込まれ、院長も周りにいた医師たちもうろたえて右往左往しだした。苦し紛れに「彼は常人より体を鍛えているので、回復も尋常でない早さだったのだと推察されます」とやったお陰で、この病院はとんでもないヤブか、あるいは軽傷なのに重体などと言って、劇的に回復するところを見せて宣伝に利用しようとした詐欺だろうなどと、あらゆる悪い評判を立てられるハメになってしまった。 ヤムチャが危機を脱したという知らせを聞いて、マリーンはザカーラと一緒に集中治療室に飛んでいった。そこには既にアロマがいて、師長らしい看護師と何か話している。 マリーンは看護師に詰め寄った。 「ヤムチャの容態はどうなんですか。ほんとにもう大丈夫なの!?」 看護師はにっこり笑って言った。 「信じられないくらいお元気ですよ。もう個室の方に移られました。でも念のために精密検査をしなければ退院は出来ません」 マリーンは最後まで聞かないうちにその場にくずおれ、意識を失った。とっさに後ろから体を支えたザカーラは、そのまま彼女を抱き上げた。 「連れて帰ります。もうここには置いておけない」 誰に言うともなくつぶやくと、彼は勝ち誇った顔のアロマに厳しい目を返し、その場を後にした。 窓の外はいつの間にか白々と明けそめていた。 |