Cool Cool Dandy2 〜Summer Night Festival〜
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第45章
タイタンズかポーラスターズか。優勝の行方を占う天王山の第1戦。ここ西都スタジアムは5万5千の観衆で揺れている。20勝を賭け、ザカーラが芸術的とも言えるピッチングでタイタンズ打線を抑え、1−0で優勢のまま回は7回裏、タイタンズの攻撃へとなだれこんでいた。 スタメンで復帰したヤムチャは軍曹の特大バットを引っさげ、打席ごとにいい当たりを飛ばした。ビデオでザカーラの投球パターンを研究したのが功を奏してもいたが、何と言ってもファームでの血を吐くような特訓の成果だった。 しかし、運命の神のいたずらか、ここぞというところでボールが風に押し戻されたり、野手の正面をついたりで、なかなか思うような結果を出せない。 「ちっくしょう。お手上げだぜ」 三振してベンチに戻ってきた5番のターフルがバットを放り投げて叫ぶと、7番のスマンスも難しい顔でぼやいた。 「プロ入りして以来、今夜のやつの出来は最高なんじゃないか。ストレートは走ってるし、スライダーの切れもいい。あれはちょっと打てんぜ。まいったな」 ロージンバッグを手にしたザカーラが、時々スタンドのあちこちに目をやることにヤムチャは気づいた。 誰かを捜している? ヤムチャは反射的にレフトスタンドを見上げた。いつも彼に声援を送ってくれた恋人の姿はそこにない。 (まさかあいつもマリーンを待って……) マウンドの宿敵に投げた視線を、再びヤムチャはレフトスタンドへと移した。今ここにマリーンにいて欲しかった。スタジアムには溢れんばかりに観客がいて彼に声援を送ってくれるのに、ヤムチャが真に欲するただひとりのひとはいないのだ。 (それでもオレは勝つ。絶対にやつに打ち勝ってみせる。オレがプロであり続けるために……) その頃、ピッコロは「パオズ山の名水」のケースを抱えてグラウンドの隅に突っ立っていた。クイズのあとしばらく、夜店を冷やかして歩くアメリアにつき合わされていたのだが、店番が回ってきたので、彼女は名残惜しそうにピッコロを置いて行ってしまったのだ。 務めは終わった。一刻も早くこんなところから抜け出そう。そう考えていた時、せっぱ詰まったアメリアの声が強くピッコロの思念をとらえた。 ――――ピッコロさん! ピッコロは思わず振り向いた。水のケースを放り出してアメリアの姿を探す。色とりどりの提灯が張り巡らされたグラウンドではダンスパーティーが始まっている。夏の大三角が広がる星空の下、人々は開放的な祭の気分を楽しみ、浮かれている。 普段は微弱な一般人の気も、理性のタガが緩んで一挙に増殖し、それが何百人分も集まって、アメリアの気を探ろうとするピッコロの周りを雑音のように取り巻いて邪魔をしていた。 「ええい、くそっ。どこだ」 ピッコロは行き交う人々に突き当たり、押しのけながらグラウンドを右往左往した。次に体育館の舞台に飛び込むと、ちょうどそこでは演劇部による「ロメオとジュリアーナ」のミュージカルをやっているところだった。 バルコニーから身を乗り出し、セリフをしゃべっていたジュリアーナ役の女生徒は、突然舞台に上がり込んで周りを見回している闖入者に驚きながらも見事な役者根性を見せ、アドリブでそれを切り抜けた。 「おお、ロメオ、ロメオ。あなたはなぜ―――ピッコロ大魔王なの?」 「知るか!」 舞台袖で他の役者たちがカンカンになって叫んだ。「おい、あいつをつまみ出せ!」 ばらばらっと舞台に走り込んで自分を取り巻いた役者たちから殺気を感じ、ピッコロは静かに制した。 「よせ。きさまらを叩きのめすわけにはいかん」 「うるさい! 劇をめちゃくちゃにしやがって。ふざけた野郎め」 役者たちは一斉に躍りかかった。ピッコロは次々に身をかわし、行く手を阻む者をことごとく気絶させてから客席に飛び降りた。そこにもアメリアの姿はない。 サタンの扮装をした男たちが数人がかりで彼を取り押さえようと飛びかかってきたのを片手で弾き飛ばし、そのまま外へ飛び出してゆく。演出だと思っている観客から喝采が起こった。 ピッコロは再びグラウンドに立った。アメリアの身に危険が迫っていることは間違いない。こうしている間に取り返しのつかないことにでもなったら……。 さっき確かに感じた彼女の気は今は微塵も感じ取れない。 まさか……死――― 「アメリア!!」 ピッコロはほとんど理性を失いかけている自分を感じながら、なおもアメリアの姿を探し求めた。 |
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