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Cool Cool Dandy2  〜Summer Night Festival〜

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第9章

 朝食の片づけを終えたアメリアが、そそくさと外出の用意を始めている。
「おい、オレが来たからって気を使うことないんだぜ」
「違うの。こう見えてもわたし忙しいのよ。今日は午前中に学校へも行かなきゃならないし、夕方からはベビーシッターのバイトも入ってるし……」
「そういうこと」マリーンがヤムチャにうなずいてみせた。

「これから学校に行くにしちゃ、えらくめかしこんでるじゃないか。誰か好きな男でもいるのか?」
 鏡に向かって一心に髪をとかしつけているアメリアに、ヤムチャがからかうように言うと、振り向いて彼女は笑った。
「そうよ。大好きな人に会いに行くの」
「ほんとかよ。ピッコロにライバル出現か!?」
 アメリアはころころ笑って鞄を取り上げ、玄関に向かいながら言った。
「そのピッコロさんに会いに行くのよ。学校に行く前に神殿に寄るの。いってきまーす」

 ドアが閉まると、ヤムチャはつぶやいた。
「なんだ、つまらねえ。ピッコロの慌てる顔が見られるかと思ったのによ」
「悪いヤツ」
 笑いながらマリーンは洗面所に行った。鏡に向かって口紅を引き直していると、ヤムチャが来て後ろから体に両腕を回してきた。
「修行はどうだった?」
と、マリーンが訊いたのは、乱闘事件の後、ヤムチャがルティネスと共に山寺にこもって修行させられていたことを指している。一番大暴れしたヤムチャとルティネスは、5日間の出場停止に罰金10万ゼニーを言い渡された。スターノ監督は知り合いの山寺にふたりを預け、謹慎期間中修行させたのである。

「どうもこうも。メシは精進料理だし、座禅に雑巾掛けに……坊主と変わらねえよ。おまけに携帯が繋がらないからきみの声も聞けなかった」
 マリーンの体をこちらに向けるとヤムチャは言った。
「会いたかった」
「ダメよ。口紅が」
 みなまで言わせず、ヤムチャはマリーンの唇を塞いだ。甘い沈黙の間に、マリーンの背に回されていた彼の右手は徐々に下に滑り降りて行く。

「いてっ」
 叫ぶと同時にヤムチャは体を引いた。
「変なとこ触らないでよ!」
「なんだよ、人をチカンみたいに」
 思い切りつねられた手をもう片方の手でさすりながら、彼は顔をしかめて言った。
「あのなあ、この際はっきり言っとくけど、オレたちは愛し合ってんだろ? 自然なことじゃないか」
 マリーンは真っ赤になって叫んだ。
「やめてよ! こっぱずかしい。どんな顔して言ってんのよ。まさかあんた、あたしといる時はいつもそんなこと考えてんじゃないでしょうね」
「当たり前だ。オレは男だぞ。男ならみんな隙あらば、と思ってるもんだ」
「ケダモノね」
「何とでも言え。今時、中学生でもこんな清く美しいカップルなんていないぞ」
 ヤムチャはもう一度マリーンを抱きすくめた。
「アメリアとピッコロさんはどうなの。これ以上ないほど清く美しいわよ」
「あいつらは特殊だ。あんなのを基準にすると人類は子孫が残せず滅亡する」

「思い出した」マリーンはヤムチャの腕からするりと抜け出して居間に向かった。「ねえ、絶対に墜落しない飛行機ってないかしら。あたしもピッコロさんに会ってみたいのよ」
 何だかはぐらかされたみたいだな―――まあいいか。思い直して後に続きながらヤムチャは答えた。
「まあ、最近の飛行機は性能がよくなってるからな。めったに墜落しないんじゃないか」
「めったにじゃダメなのよ。前に言ったでしょ。あたし高所恐怖症なの。絶対に墜ちないっていう保証がない限り、飛行機には乗りたくない。だいたいあんな金属の塊が空を飛ぶなんて非科学的よ」
「非科学的ねえ。……あ、そうだ」
 ヤムチャはマリーンの顔を見て意味ありげな目をした。
「あるぜ。絶対墜落しないやつ」


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