Cool Cool Dandy2 〜Summer Night Festival〜
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第41章
いつまでも未練がましく尾を引いていた太陽の残照がようやくおさまると、闇はゆっくりと幕を下ろし、グラウンドに張り巡らせた提灯や夜店の灯りを浮かび上がらせるように濃くなってゆく。 その頃になってもピッコロの姿は見えなかった。アメリアは委員の仕事の合間にピッコロを探して校門へ何度となく足を運んだ。 「ピッコロさん、来てくれないの……」 何度も空振りをして、ベソをかきそうな顔であちこちに目を走らせていたアメリアは、やがて校門を入ったところの木立の陰に身を隠すように立っている目当ての人を見つけ出すや、弾かれたように駆け寄った。 ピッコロは律義にも彼の言葉通りターバンをはずして来ている。が、幸いにもその姿はいろんなコスプレをした人々に紛れ、奇異には映らないのだった。 彼は目の前で繰り広げられている、そっくりさん同士が演じる「ピッコロ大魔王、サタンにこてんぱんにやられて再起不能の図」のパフォーマンスを苦々しげに横目で見ている。 「ピッコロさん! 来てくれたのね」 いきなり腕に飛びついて来たアメリアに、彼は心底後悔しているような顔を隠せずつぶやいた。「約束だからな」 ピッコロを限りなく慕う少女は想い人の仏頂面にもめげず、満面に花のような笑みをたたえて彼を見上げた。それはほんの少しだがピッコロの苛立ちを鎮める効果があった。 アメリアが何か言おうとした時、ミントが彼女を呼びにやって来た。射的の景品が足りなくなったので、倉庫まで取りに行くのに手を貸して欲しいと言う。実行委員は祭を楽しむどころではないのである。アメリアはすまなそうにピッコロに断りを入れ、校舎の脇にある倉庫へ向かった。 「ねえ、今の人がアメリアの彼なの? すっごいリアルね、あのお面。どこで手に入れたのかしら」 「さ、さあ」 「素顔が見てみたいわ。後で紹介してよね」 「え、ええ。でも、シャイな人だからお面は取らないと思うわよ」 冷や汗ものの弁解をしながらアメリアは景品を店まで運び、ピッコロの元へ取って返した。ピッコロはグラウンドの隅の木の下で賑やかな祭の輪から離れ、つまらなそうに腕組みをして突っ立っている。 「ごめんなさい。バタバタして」 「忙しそうだな」 「帰るなんて言わないでね」機先を制するようにアメリアは言った。「お願い」 すがるようなまなざしで見つめられ、ピッコロはあわてて目をそらした。彼は人混みに紛れてとっとと逃げ出そうと思っていたのである。 「委員は交代で店番とか舞台の担当があるんだけど、わたしの番はもっと後なの。だからそれまでなら一緒に―――」 そう言いかけたところへまたミントが今度は血相を変えて飛んできた。 「アメリア! 助けて。お願い。舞台に穴があいちゃう」 「どうしたの? ミント」 息を切らせながらミントが言うことには、これから体育館で演劇部の劇が始まるところだったのだが、重要な役どころの部員が舞台袖の階段から足を踏み外して捻挫し、 そこでプログラムの後の方にあるクイズと入れ替えることになった。しかし、急な話で出演予定者がすぐには集まらず、参加者を集めに委員が奔走しているとのことだった。 憧れの生徒会長の危機というので、ミントはとりわけ必死になっている。 「誰でもいいから参加者を集めて来て。アメリア」 そう叫びながらアメリアの後に立つ人物に何げなく目をやり、ミントは目を輝かせた。 「そうだ、彼、彼でいいわ。ねえお願い、助けると思ってクイズに参加して下さい」 「オレが!?」 有無を言わさぬ強引さでミントは面食らっているピッコロの腕を両手でつかむと、ぐいぐい体育館の方へと連行して行く。その後を大あわてでアメリアが追った。 |
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