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Cool Cool Dandy2  〜Summer Night Festival〜

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第46章

 倉庫ではカークと取引相手シャブーが袋詰めの麻薬と金を交換していた。
「確かに」
 銀髪にかぎ鼻のシャブーが上背のある体をかがめて袋の中身を確認する。その向かいでカークが札束を勘定し終えてニヤリと笑った。「こっちもだ」
 シャブーは手下に指示して全ての袋を倉庫の裏に停めてある車に運ばせ、退散まぎわに床に転がったアメリアとディルをチラッと見やってカークに告げた。
「秘密厳守だ。わかってるな」
「当然だ」

 帰り際に片づけると聞いて、シャブーは銀歯を見せ、凄みのある笑みを浮かべた。
「甘いな。余計なものはさっさと始末するに限る。いいものをくれてやろう」
 液体の入った茶色の瓶をカークに手渡す。
「体内で完全分解される。証拠は残らん」
「なるほどな」

 取引相手が去るや、カークはマジョラムとイザーセが固唾を飲んで見守る中で、アメリアの前に片膝をついた。
「さてと、お嬢ちゃん。これを飲んでもらおうか。なに、苦しいのはほんの一時だけだ。すぐにこんな怖いことからは解放される」
 ディルが必死に呻いた。何とかしていましめを解こうと狂ったように床の上を転げ回る。

「静かにさせろ」
 カークの命令にマジョラムが動いた。なおも激しく暴れようとするディルを両手で押さえつける。
(マジョラム! あなたは……)
 アメリアは絶望の淵に沈んで目を閉じた。猿ぐつわが外され、唇に冷たいガラスがあてがわれる。強くかぶりを振ってそれから逃れようとすると、カークは彼女の鼻をつまみ、口をこじあけて毒薬を飲ませようとする。

「ピッコロさん!―――ピッコロさん、助けて!!」
「このガキ! おい、イザーセ、何をボケッと突っ立ってやがる。手伝え!」
 ほとんど悲鳴のような返事を返し、イザーセは震えながらアメリアの頭を押さえつける。カークが瓶の液体をアメリアの口に無理矢理注ごうとした瞬間、彼の体は背後から突進して来たものに弾き飛ばされ、イザーセもろとも倉庫の壁にぶちあたった。はずみでこぼれた毒薬をかぶってしまったイザーセは、この世の終わりのような悲鳴を上げて着ていた作業着を脱ぎ、必死になって頭を拭っている。

「てめえ、裏切りやがったな!」
 起きあがったカークがマジョラムに叫んだ。体当たりした拍子に眼鏡を床に飛ばし、息をはずませたディルがカークを睨み据えながら立っている。彼が転がされていた床には切れたロープが落ちていて、マジョラムがいつの間にかイザーセの首にナイフを突きつけて立っていた。
 ディルを押さえつけているように見せかけて、彼女は隠し持っていたナイフでディルの縄を切ったのだ!

 ディルは急いでアメリアの縄を解いた。
「カッコつけて持ち歩いてたナイフが役に立つとはね」自嘲の笑みを唇に浮かべて言ったあと、マジョラムはカークに向けて怒鳴った。「動かないで! 動けばこいつの命はないわよ」
「誰の命だって?」カークはにやつきながら懐から銃を取りだし、マジョラムに照準を合わせた。イザーセが命乞いの悲鳴を上げる。
「あ、兄貴……」
「てめえの代わりなんざ、いくらでもいるんだよ。ドジが」

 グラウンドで立て続けにダンスパーティーの半ばを知らせる花火が上がった。祭が終われば夏も終わる。過ぎゆく青春の季節を惜しむように、人々は熱を込めてダンスに興じている。
「ちょっと予定が変わっちまったが、てめえらはここでゲームオーバーだ」
 カークがゆっくりと引き金を絞る。マジョラムの前にディルが飛び出した。
「マジョラム、逃げろ!」
 カークの腕にアメリアが飛びついた。銃をもぎとろうとする彼女を力任せに振り払い、その胸めがけてカークは発砲した。その場にくずおれるアメリア。
「アメリアさん!!」
 ディルが悲痛な叫びを上げた。


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